映画『ヲタクに恋は難しい』を見た感想

この記事は何?

最近時間があるので Amazon Prime Video の映画を見て回っているのですが、つい先日とんでもない作品が追加されているのを見つけてしまいました。

映画『ヲタクに恋は難しい』です。

本作は、漫画原作を実写映画化した作品なのですが、当時から「キツい」「つらい」「共感性羞恥」「つまらない」など多くの広義賛辞の声が寄せられた作品です。 当時は時間もなく別に見る気も無かったのですが、このたびアマプラに来てしまったことで見てみました。

前評判からとんでもない駄作だと身構えていたのですが、蓋を開けてみれば順当な駄作どまりでした。 正直、そこまで酷い作品ではなかったと思います。 まあ、僕が実写映画に慣れていないからそう感じただけかもしれませんが。

なんか、つまらないというより「キツさ」が前面に押し出された作品で、「そうか!こういうのもあるのか!」と新感覚を味わえました。 少なくとも、オタクの人間がこれを見たら「面白さ」より先に「共感性羞恥」が来る人の方が多い気がします。 恐らく、ディープなオタクというよりは「オレ漫画とかよく読むしオタクだよw好きな漫画はワンピースかな!w」みたいな層をターゲットにしているのだと思います。 まあ、仮に僕がオタクでなかったとしても、普通に内容もつまらなかったので、「見ていて恥ずかしい」が「見ていて無」に変わるだけですが。

さて、本作はアニメ映画ではないのですが、実写映画のレビューも書いてみようかなと思ったので書きました。 僕は原作やアニメの出来については今回言及しておらず、あくまでこの映画を見た感想を述べているだけなのでご了承ください。 また、本記事はいつも以上に雑な文章であり、かつ映画ヲタ恋のネタバレを多く含むのでご容赦ください。

感想

まず、感想の前に『ヲタクに恋は難しい』がどういう作品かを簡単にまとめたいと思います。 この作品は、端的にまとめれば社会人になって再会したオタクの幼馴染二人(成海・女、宏嵩・男)がラブコメをするという作品です。 僕は原作を読んでいないのですが、聞く限りでは原作は面白いらしいです。 アニメ化もされているのですが、僕にはそんなにハマらなくて途中で切ってしまいました。

さて、ここで冷静に考えて欲しいのですが、ラブコメとかいうジャンル、数あるジャンルの中でもかなり実写映画化が難しいと思うんですよね。*1 ただの恋愛作品ならいさ知らず、そこにコメディが付加されると数段作品の難易度が上がります。 ラブコメ(特にコメディ要素が強いもの)はテンポや間、空気感がめちゃくちゃに難しいのに、世の中には果敢にもラブコメの実写化に挑むチャレンジャーが多いみたいです。 まあ、そのチャレンジのほとんどは墓標を積み上げるだけに終わるのですが。

本作もまた、新たな墓標を1つ増やすことに成功しています。 ただ、本作は「死ぬほどつまらん。駄作!」と断言され得るようなものではなく、「まあ、頑張ったんじゃない。つまらんけど」ぐらいのものだったと思います。 一瞬だけ「努力賞ぐらいならあげてもいいかな」という気持ちになるのですが、努力の方向性が間違っている箇所が多々見受けられるのでそれすらあげられませんね。

ブコメとして

本作はラブコメということで、今回はまずラブとコメそれぞれの要素について感想を述べたいと思います。

まずコメディです。

本作もご多分に漏れず、ラブコメのコメディ部分が死ぬほど面白くないです。 真顔に告ぐ真顔。終始、死ぬ気のゼロ地点を突破した沢田綱吉みたいな表情になっていました。

というか、面白い面白くない以前に、共感性羞恥を催すシーンが多すぎて「あ゛゛゛゛ぁああ!!!!!!!殺してぐれぇぇ!!!!!!」って叫んでました。 何で映画見ながら救いを求めなきゃいけないんですか?

総括すると、「オタクが高校の後夜祭でオタ芸披露して滑り散らかした」みたいなのが2時間続きます。 いや、なかなか作れないだろこんな地獄。

キツかったシーンは多々あったのですが、個人的に最もキツかったのは成海が会社の同僚たちと居酒屋に呑みに来たシーンです。 ちょうど別卓に来ていたオタク友達(コスプレイヤーたち)とたまたま出会い、成海は同僚たちの存在を忘れて彼女たちとハイテンションにオタトークで盛り上がります。 このコスプレイヤーたちが fgo *2 のコスプレをしていたのですが、急にキャラのセリフを言い出してキメポーズを取り始めたときは最も「頼む……殺してくれ……」という気持ちになりました。 居酒屋で他の客も成海の同僚もいるのに、コスプレだけならまだしも急にセリフ言い出さないでくれ。こっちが死にたくなる。

しかも成海もそれを見て「キター!!!完成度たけぇぇぇぇ!!!」みたいなこと叫んでるし。他のお客さんの迷惑だからやめなさい。 普段は fgoクソゲーだと罵っている僕も、流石に fgo が可哀想になりましたね。 こんな使われ方をするために許可出したわけじゃなかろうに。

また、作中ではオタク的演出として、登場人物のネットスラングの乱用や、急に画面を流れる某動画サイト風のコメントなどが多く見られます。 ただ、使い方が雑だったりテンションがクソ高かったりとこれもかなり険しいです。 登場人物の大半が、銀魂に影響された女子中学生みたいでした(おいおいおいおいおーーーい!!!ww)。

あと、これをコメディの話題に入れるべきかは迷ったのですが、なんかこの作品めちゃくちゃミュージカルが挟まります(は?)。 クソ作品はミュージカル要素好きですね。

しかし、案の定ミュージカルの完成度も低く、ただただテンポが悪くなっただけでした。 マジでミュージカルやってみたかっただけだろ。 ミュージカルが挟まるたびに、意味が分からなさ過ぎて腹の底から笑っていました。 ありとあらゆるギャグより急に挟まるミュージカルが面白かったです。

コメディの話はこれぐらいにして、次にラブの話をします。

話すことは何もありません。

いや、本当にマジで恋愛要素あったか?ってぐらい印象が薄いです。

なんか、成海と宏嵩が一瞬で付き合い出して、なんかよく分からないままにデートしたり喧嘩したりして、最終的に丸く収まりました。

あの、つかぬことをお聞きするんですが、恋のどのあたりが難しいんですか……?

脚本や演出について

脚本は可もなく不可もなく、演出は不可です。

脚本がつまらないのは別にいつも通りなのですが、前述した謎ミュージカルや流れるコメントなどとんでもない演出の数々が特に怪しい光を放っていましたね。 登場人物の奇行と演出の奇怪さが合わさり、奇々怪々な仕上がりになっています。 「お、おお……あんまりはしゃぐなよ、オタク……」と言いたい気持ちになりました。

特にやっぱりミュージカルが本当に本当にヤバくて、質が低く、テンポも悪く、無駄に長く、頻繁に挟まるとかいう最低最悪の要素でした。 『ラ・ラ・ランド』とかを見習えよ。見習ってこれならもっとちゃんと見ろ。 まあさらに最悪だったのは、終盤で宏嵩が「歌とかいいんで!!!」ってミュージカルにキレたシーンですかね。 メタツッコミだと思うんですが、これが決め手となって僕はこのミュージカル要素を本当に許せなくなりました。

あと、原作がどうなのか知りませんが、オタクの描写が非常に浅いなと感じました。 これはキャスティングと脚本両方悪いんですが、陽キャがオタクの振りをしているように見えて本当にキツかったです。 ネットスラングを多用するところとか、振る舞いがオタクくさ過ぎるところとか、露骨すぎて一周回ってオタクっぽくなかったです。

一応、主人公(女)である成海は会社ではオタクを隠している設定なのに、普通に会社とか公共の場で大声でオタクっぽい話を叫んでいるのも謎でしたね。 隠す気ないだろお前。 オタバレして前の彼氏に振られたとか言ってくよくよしてたの誰だよ。

ほか

さて、ここまで脚本や演出について言及してきましたが、ここからはざっくりと思ったことを書き連ねます。

そもそもの話として、オタク趣味を持っているだけの陽キャの美男美女の恋愛の何が難しいんだよというのが、実写化でさらに浮き彫りになってしまった感はありました。 難しいって言われたからダークソウルだと思って蓋を開けたらマリオだったわみたいな。

普通に考えて欲しいんですけど、山崎賢人高畑充希が「うおおおワイらはヲタクや!恋愛難しいンゴ!」みたいなこと言ってても、「もしかして陰キャオタクのことバカにしてる?」ってなるでしょ。 2次元であれば、登場人物ほぼ全員美男美女なので許せるんですが、実写化してしまうと途端に状況の異質さが際立ってしまいましたね。

ヲタクに恋は難しい』ってタイトルでこれを売り出してるの、流石に景品表示法違反だと思う。 もしかしたら逆に、「登場人物たちはヲタクでも美男美女だから恋愛に難儀していないが、これを見ているお前らはヲタクだし美男美女じゃないから恋愛は難しいよw諦めなw」っていうメッセージなのかもしれません。なんでそんなひどいこというの……

まあ、これは映画が悪いというよりは原作も悪い気がするし、99%は僕の僻みと被害妄想が悪いんですけどね。

また、個人的にずるいなと感じたのは、サブキャラクターのキャスティングです。 佐藤二郎や菜々緒ムロツヨシ斉藤工といった「場に置いておくと面白くなる(コスト0)」みたいな強カードを雑に画面内に配置しておくことで、面白さを底上げしようとしているのが許せませんでした。 というか、この面子を使ってなおつまらなく作るの逆に難しいだろ。何でつまらないんだよ。

ただ、菜々緒刀剣乱舞のコスプレさせたのだけはマジでこの作品唯一の功績だと思います。 バカかっこよくて「菜々緒さんすげー!!!!!!!」ってなりました。流石に格が違う。

あとこれはどうでもいい話なのですが、中盤付近で内田真礼のライブシーンが出てきます。 宏嵩含むオタクたちがコッテコテのオタ芸をしていてまあそのシーンも非常にキツいのですが、内田真礼が「ギミー!レボリューション」を歌い始めたのでどうでもよくなりました。 やっぱり田淵智也*3は良い曲書きますね。

まとめ

つまらない作品や、しょうもない作品は数多くあれど、ここまで「うわ、きっつ」となる作品は稀有なのではないでしょうか。 「共感性羞恥」を作品に昇華した本作は非常に興味深い作品でした。 たぶん、この作品はオタク向けに作られていなくて、オタク風味の陽キャ(かファッションオタク)向けなんだと思います。 これに共感性羞恥を覚えるようなオタク君はそもそもターゲットじゃないので門前払いです。お疲れさまでした。

数多くのコンテンツや俳優、声優を巻き込んで盛大に事故り散らかした本作は「ヲタクの実写化は難しい」ということを再確認させてくれてましたね。 勉強になりました。ありがとうございます。

これまで長々と書き連ねてきましたが、最後に2つだけ書き残してこの記事を締めくくろうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

*1:というか、漫画原作の実写化は全部難しいだろ。

*2:Fate Grand/Order、ソシャゲ

*3:UNISON SQUARE GARDEN のベース。作詞作曲も手掛けている。