『異世界の門』を見た感想

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2022年ももう終わってしまう1年の暮れも暮れ、皆さんはいかがお過ごしでしょうか? 僕は相変わらず面白いアニメとつまらないアニメを交互に見て感性を破壊する日々を過ごしています。

さて、2022年を終えるにあたってどうしても1つ触れておかなければならないアニメ作品があります。 いや、アニメかどうかすら怪しいレベルの完成度なので、アニメ作品というラベルを付けることには非常に抵抗があるのですが、一応アニメ作品と呼称しておきます。

そう、『異世界の門』ですね。

この作品、ヤバいヤバいという噂は聞いていたのですが、そのヤバさがちょっと常軌を逸するレベルというか。 もはやアニメ作品としての体裁を保っていないというか、何、その何? アニメ感想を数多く書き残してきた僕ですら言語化に困るレベル。

そんな怪物とも呼べるこの作品の Amazon レビューは驚異の☆1.6。 最低が 1 であることを考えると、ほとんど全員が 1 をつけているわけです。 しかも、5 を付けているのはクソアニメを嗜んでいそうな異常者ばかり。 要するにクソアニメ偏食家とかいう世界の外れ値をレビュワーから除外すると、ほとんど 1 ジャストです。 嘘だろお前、クッキー☆をアマプラで配信した方がまだ評価高くなるぞ。知らんけど。

ちなみにこの作品、完成度の低さは言うまでもないのですが、そのヤバさは必ずしも作品自体の完成度の低さだけに起因するものではありません。

この作品は、堆く積まれたごみの山を必死にかき分けると、なんとその奥底に闇が眠っているんですね。 作品の周辺情報を軽く調べて見ると、何ともまあ制作体制のきな臭さが香り立ってきます。 すごいですね、最近のクソアニメはどうしてこう手を変え品を変えクソコンテンツとしてのアイデンティティを競いあっているんでしょうか。

ということでこの記事では、そんな令和が産んだ化け物『異世界の門』の感想を書いていきたいと思います。

感想

このアニメを語るとしたら、まずはその独特(婉曲表現)な作画方法にあります。 この作品は「ピクチャー・アニメーション」を自称しており、アニメ本編の全てが紙芝居で進行します。

……?

あ、いや作画枚数が足りなくて「紙芝居じゃんこれw」とかではなく、ガチのマジで紙芝居です。

こんな感じのキャラクターたちがこちらを向いた立ち絵のまま、話が進行します。 普段の動きといえば、微妙に Live2D で口元が動いたり体が規則的に揺れるぐらいで、基本的にこの状態から画面が動くことがありません。

紙芝居っつうか、2010年ごろのフリーノベルゲームだろ。

当時はフリーゲームが実況動画など含めて非常に流行っていましたね。 今でこそやや下火ではありますが、フリーのホラーゲームやアドベンチャー、ノベルゲームなんかが日々現れては話題になっていた記憶があります。

さて、2010年の話から2022年の話に戻すんですが、『異世界の門』の戦闘シーンはこんな感じ。

立ち絵が回転したりエフェクトがかかったりはするが、基本紙芝居なので何が起きているかはよくわからない。

もうこの時点でめちゃめちゃに面白くて、最初に見たとき爆笑してしまった。

アニメだと思って見始めたら静止画を叩きつけられた気持ちがお前に分かるか? カレーだと思って口の中に入れたらこんにゃくの味しかしなかったんだぞ。

いや、この作品本当にこのままの調子で24分 × 12話やるんですよね。 ちょっと信じがたいと思うんですが、この作品が令和の世に爆誕し、あまつさえ地上波(チバテレビ)で放映されていたという事実は人類の汚点として語り継ぐべきです。 チバテレビの偉い人、制作に弱みを20個ぐらい握られてたんですかね。

ちなみに、最初は本当に紙芝居ばっかりで何の動きもなかったんですが、話が進むにつれて徐々に動きが増えていきます。 立ち絵を回転させたり、透過させたり、エフェクトをかけたりすることを覚え始め、わずかながら動画と呼ぶべき何かになっていくのは製作者の成長を感じて感動してしまった。 動画編集ソフトの使い方ちゃんと勉強したんだねぇ……えらいねぇ……

失礼。初孫を前にしたおばあちゃんになっていました。

ただ、個人的にはこのピクチャー・アニメーションとか言う方式本当に面白かったです。 作品のほとんどはずっと紙芝居で変わり映えしない画面を作っているんですが、突然光り輝く剣が画面の中央に出てきてぐるぐる高速で回転し始めたりするトンチキが発生するので目が離せないんですよね。 剣がグルグルするシーン、あまりに唐突かつ絵面が面白すぎて何度もリピートしてしまったので他の人にも見て欲しい。 実際他の人に見せたら爆笑してたから、多分人類普遍の感情として光る剣がグルグルしてると面白いんだと思います。

なんか、2話に1回ぐらいこういう異常に絵面がおかしくなるシーンが発生するせいで、脳がバグって最後までこの作品を見てしまいました。 完全に毎回餌が出るレバーは引かないけど確率的に餌が出るレバーは引くようになってしまうアレです。

さて、この作画方式だけでも既に『異世界の門』が常軌を逸していることは十二分に伝わると思うのですが、この作品の異常性は実はそこだけではありません。

もうこの作画の時点でややお察しではあるんですが、声優が本物の素人集団なんですね。 「俳優とかいうの声の仕事においては素人だから〜」とかではなくガチの素人を起用しているっぽくて、公募をかけて募集してきた事務所にも入っていないような素人やネット声優を片っ端から起用しています。

かつては Web 上にオーディション応募のサイトがあったのですが、今はもう消されてしまっているのが悔やまれます。 ネットで拾ったスクショですが、当時のサイトはこんな感じ。

中学生が授業で作る HTML かな?

このサイト本当にやばくて、ここに書かれてる文字全部画像だし、なんかタグの構造おかしいし、応募方法が電話か LINE 経由しかないし、会社の情報どこにも乗ってないし、プライバシーポリシーとか個人情報の取り扱いに関する話もないしで、ダブル役満ぐらいある激ヤバ応募サイトでした。

しかも、何とこの激ヤバサイトで申し込んだオーディションで才能ありと認められると、会社が声優として活躍するためのレッスン(自費)も斡旋(強制)してくれるらしいです。 そのレッスンを通じて声優としての実力を向上させ、さらにアニメに出て地上波(チバテレビ)デビューできるわけです。 いやあ、親切ですね。

ここで聡い読者は気付かれたかもしれませんが、もしかしてこれって詐g……

ま、まあほら、需要と供給ってやつですよ。どうしてもテレビに声優として出たい人もいるので、レッスン代ぐらいは安いものでしょう。

そしてこんな作品に応募する人に当然まともな声優などいるわけもなく、全員が全員棒読みの限りを尽くしたような素人集団の音読会になってしまっています。 唯一、主人公の声優だけはギリ新人声優としてやっていけるぐらいには上手かったのですが、いや逆に何でこんな作品に出てしまったんだ……

ちなみに出演声優が OP や ED を歌っているのですが、その販売タイミングが声優本人に一切共有されていないのとかもめちゃめちゃ笑ってしまった。

これ、「は?私知らされてないんだが?」っていうツイートなのに『異世界の門』公式ツイッターくんが意気揚々と RT してるのどういう感覚してんだマジで。

いや〜〜〜これまでにない新しいクソですね。まさかクソアニメを突き詰めすぎると、法に触れ得るんだなというのは目から鱗です。 「つまらなすぎるクソアニメ、ギリギリ傷害罪だろ」と思っていた僕も、まさか詐欺罪の方で立件されかねない作品が出て来るとは思いませんでした。

この作品の声優関連は闇が深くて、ずっと棒読みだなと思っていたキャラクターが急に上手くなったから「おい!?もしかしてレッスンの成果出てるのか!?」と驚いていたら、単純に声優が交代していただけだったりもしました。 これ以上はどこかから消されそうなので話すのをやめておきましょう。

さて、大体メインのヤバいところは話し終わったんですが、この作品ぶっちゃけどこをどう切り取ってもクソなので「Q. ○○はどうでしたか?」「A. クソでした」としか答えようがありません。 金太郎飴のようにどれだけ切ってもクソの面を拝むことになります。こんにちは、また会いましたね。

一応、他の観点も触れておきたいんですけど、なんか前述した2要素があまりにデカいクソとして眼前にそびえたっているせいで、他のクソが霞んでしまいます。 他の要素についてあまり感情がない。

ストーリーは多分それなりに王道……だったような気がしないでもないでもないです。 というのも、いかんせん絵から伝わってくる情報がなさすぎるせいで何が起きているのか分からず、最終的にあんまりストーリーは分からなかったです。 いや、概要は分かるんですけど、なんか細かいキャラクターの意図とか、立ち位置とかがマジで分からなかった。結構真面目に見てたのに。

この作品、こんな駄作なのに無駄にキャラクターが多いんですよね。 恐らく前述のオーディション詐g……もとい親切なサポートレッスンのために大量の素人声優を集める必要があったんだと思います。 平気で声優を途中交代させてたのも多分それと同じ理由。

しかも12話終わった時点で「俺たちの戦いはまだまだこれからだ!」っつって、生意気にも打ち切りエンドで終わらせてしまったので結末は闇の中です。 せめて四大精霊全員倒すところまではやれよ。何で三体目倒したところで打ち切ってんだよ。両親の裏切りは一体何だったんだよ。魔王っぽいやつの目的は……

いや、やめましょう。こんな作品の結末に1ミリでも感情を動かしているのがバカらしくなってきました。 画面は動かねぇのに。

まとめ

異世界の門』は、もうなんかクソとかの次元を1つ飛び越えてしまった、それこそ "異世界の怪物" ではあったのですが、それでも僕らに教えてくれたことが数多くあります。 たとえば、新人声優でもちゃんと養成所などを出ている人は素人より上手いんだなということや、アニメにおいて絵がちゃんと動くのは大切なんだなということ、そして我々が普段見ているアニメはどれだけ完成度が低いように見えても非常に完成度の高いものであるということです。

いやまあこの作品をアニメと主張する図々しさだけは見習いたいかもしれない。

このアニメに触れてしまうと、世に蔓延るクソアニメなどクソアニメでも何でもないという気持ちになれるので不思議ですね。 また1つ新しい世界への扉、いえ、門を開いてしまったかもしれません。 誰か閉じてくれ頼む。

さて、この作品は完成度は散々ではありました。 しかし、こんな作品だからこそ数多くの学びを得ることもできたのは事実です。 今後一生、この作品を(下に)超える作品は出てこないでしょう。

そして、数多く得られた学びの中で、恐らく最も大切なものは次の1点だと、僕は確信しています。

詐欺には気をつけよう。

ここまで読んでいいただきありがとうございました。