『サマータイムレンダ』を見た感想

この記事は何?

今更ながら『サマータイムレンダ』というアニメを見ました。 とても面白かったので、せっかくだし感想をしたためておきます。 ちなみにここで言う面白いというのは辞書上の原義通りの面白いという意味で、一切の他意はないです。いや、マジで。

ということで、本作はクソアニメでもなければクソ映画でもないんですが、たまには順に面白いアニメの感想を書こうと思います。 そうでもないとどちらが逆方向か分からなくなってしまうので。

この感想ブログには多分にネタバレが含まれているので、まだ『サマータイムレンダ』の原作漫画もしくはアニメを最後まで見ていない方はご注意ください。

感想

この作品、先日会社を辞め無職になって幾数日、有り余る時間をどう消費しようかと思っていた矢先にアマプラのオススメに出てきたんですが、見始めたらもう止まりませんでしたね。 「最近はアニメを見る体力も無くなってきて1クール1日で見るとか厳しいわぁ〜」とかジジイみたいなことを言っていたんですが、本作は2日で24話見切ってしまった。面白い作品ならいくらでも見れることが証明されましたね。

本作は簡単にいうとタイムリープもので、タイムリープする力を得た主人公が最悪のエンディングを回避すべく3日間をやり直すというものです。 タイムリープものといえば僕が思いつくアニメ作品だと、シュタインズゲートやリゼロあたりが名作として思いつきます。ひぐらしとかもタイムリープものだとは思いますが、またちょっと毛色が違う気もするかな。

「えぇ〜今さらタイムリープものでござるかぁ〜?」と最初は眉唾に考えていたんですが、まあこのタイムリープ設定がよくできている。

タイムリープものって何度も繰り返す中で読者が「いや、でもまたこれ死んでやり直せば良くね?」って感覚が麻痺していきやすいと思うんですが、本作は「タイムリープで戻る時間がどんどん遅くなっていく(勝手にセーブポイントが更新される)」ことでタイムリープそれ自体にリスクを付けていたのが秀逸な設定だったと思います。

しかも、このタイムリープが途中までは主人公一人の意識が戻るだけだったのに、途中からはヒロインである潮の影を一緒に連れていけることが判明したり、敵側も同様にタイムリープを認識できるようになったりして、タイムリープという1つの要素に色々な設定を付与させて物語の起伏を産み出していて、最後まで本当に飽きませんでした。

タイムリープもので敵も一緒に意識が戻って行動を修正してくるとかいうの、かなり衝撃的な展開でビビり散らかしてしまった。 主人公のタイムリープの繰り返しでどんどんより良い未来に近づいていってきたはずなのに、突然梯子を外された絶望感には痺れましたね。

一応、ひぐらし(業)でも確かに敵もリープする設定はあったんですが、何だろうその、あれは別にそれで話面白くならんかったし……やっぱり素材が良くても調理法が大事というか……

閑話休題。つまらないアニメの話はやめておきましょう。

そんなこんなで、敵とこちら側でリープを用いた一進一退の攻防を繰り返していたのが本当に見ていて面白かったです。 本作は分かりやすい無能が敵にも味方にもほぼいなくて、無能っぽく描かれている凸村ですらそこそこ役割を発揮していたので、ちゃんと双方が与えられた情報をもとに”俯瞰して”推理をして行動をしているという納得感がすごくありました。 物語のために必要以上に無能になるキャラがいなくて、近年の浅い作品たちは見習って欲しい。

これは自説なんですが、作品の面白さって敵が魅力的かどうかが1つの重要なファクターだと思うんですよね。 敵というのはある種作品における障害なわけで、その障害がある程度読者に取って難しいものだと感じられる障害でないと話にのめり込めません。 たとえば敵がめちゃくちゃ賢いとか、手が出ないほど強いとか、確固たる信念を持っているとか、何でもいいんですが敵が魅力的でないとどうしても作品は精彩を欠きます。

その観点で言えば本作は敵がちゃんと強力かつ有能でよかったですね。最後の方ちょい小物っぽくもあったんですが、動機も理解できたし、強くて知恵の回るやつだったのでかなり魅力のある敵キャラだったと思います。 やっぱり優秀な敵を主人公たちが上回る瞬間が一番気分が良い。

タイムリープなどの SF を中心に据えて、恋愛や友情、家族愛であったりなど人の心情の描写もしっかりとされていたのも好印象(僕はそういうの大好きなので)で、いとすばらですね。あのギッチギチのスケジュールの中で、潮との恋愛の進展だったり、澪の告白と玉砕とかもちゃんと無理なくお話の中に混ぜ込めるのは脚本のパワーを感じます。原作がすごいのもあると思うけど、映像化に伴ってもそれが損なわれないというのは偉大です。

いや〜マジで設定と展開のバランス感覚がすごかったんだよな。 物語の起伏、緊張と緩和、敵と味方のパワーバランスなどがかなり繊細に組み立てられています。

影の潮が最初はナーフされた状態から始まって記憶を思い出して一瞬チートか?ってなったと思えばそのあと一回敵に消される展開とか、南方ひづるが死んで大幅に戦力が下がったかと思えば龍之介が主人公であるしんぺいに託されて未来視の能力がしんぺいに宿るとか。

足し算があれば必ずそのあとに引き算があって、引き算のあとには必ず足し算がある。 それを繰り返して読者が熱中している間に話の最後まで駆け抜けてしまう。そんなある種の疾走感があったと思います。

最後の方ちょっと異能バトル感強くなりすぎちゃった気もするけど、いっちばん最後の最後は話の根幹であるタイムリープに立ち戻って解決させるのでそのあたりも綺麗な落ち方をしている。 あと、個人的に龍之介の新作小説が『サマータイムレンダ』というタイトルがつけられたのもすごい好き。 最後のオチで本編の出来事を綴った作品が本編中で書かれてタイトル回収される、みたいなやつマジで好きなんだけど分かる人おる?

さて、基本的にお話が面白くて暇さえあれば脚本を褒めちぎり続けてしまうんですが、作画や演出、声優の演技、音響など総じてよくできていて欠点が見当たりません。 あまりに欠点がないせいで視聴途中から「逆に貴様は何を持ち得ないのだ……」って五条悟を見る漏瑚の顔つきになっていました。

強いて言うなら、黒幕の声がボイチェンで出てくるんですが僕の絶対声優感が高すぎて口調や話し方の抑揚から中身が誰か分かってしまったのでそれぐらいかもしれない。 世間にはこういうキモいオタクがいるので、本当に黒幕の正体を隠したい時は声優を変えるか演技を大きく変えさせた方が良いですよ。

ちなみに、メインヒロイン二人の声優はどちらも新人なんですが、僕はたまたま本作よりも後に放映された別の作品で二人の名前を知っていました。 いや、我ながらこのレベルの新人声優よう知っとったなと驚いたんですが、これからも頑張って欲しい。

まとめ

ということで今回は珍しく面白いアニメの感想を書きました。

順当に面白くてついつい他のアニメと比較してしまって良くないですね。 感想を書きながらクソアニメの数々が頭をちらついてしまい、自我を抑えるのに必死だった。あぶねぇ。

サマータイムレンダ』本当に面白いのでまだ見ていない人は是非見てください。