日本沈没2020 劇場編集版 シズマヌキボウ を見た感想

この記事は何

この記事は、『日本沈没2020 劇場編集版 シズマヌキボウ』の感想を記した記事です。

ちょっと前に面白いアニメ映画である『鬼滅の刃 無限列車編』のレビューを書いたのがいけなかったんですかね。 バイト先の先輩に「絶対見た方がいい」と強い言葉でお勧めされ、1800円と2時間半をドブに捨ててきました。 かかった時間もお金も今までで一番高くつき、コスパで言えば過去最悪の作品でした。

本作はざっくり言うと、大体『王様ゲーム THE ANIMATION』でした。 脈絡なく雑に人が死ぬし、それがシュールギャグになっているあたり、まさに同類と言って差し支えありません。 『日本沈没』を原作に据えて、何でシュールギャグアニメが作れるんだよ。逆に難しいだろ。

ということで、この記事はシュールギャグアニメーションである日本沈没2020の感想文になります。 地震とは奇縁がある僕*1ですが、まさか地震を題材にしたアニメの感想を書く日が来るとは思いませんでした。 ネタバレを多分に含みますので、ご容赦ください。

いきさつ

まず、この映画を見に行く前段階の話を少ししたいと思います。

僕は、日本沈没はちょろっと映画(新しい方)を見たことがある程度の知識しかありません。 ざっくりと「大地震が来て日本が終わり、そこに生きる人々のあれやこれやを描いたもの」みたいな認識しかありませんでした。

そんな折、「Netflix に来た『日本沈没2020』とかいうアニメがやばい」という話がクソアニメ界隈から流れてきました。 実は『日本沈没2020 劇場編集版 シズマヌキボウ』は Netflix で独占配信されていたアニメを、劇場アニメ用に再編集したものなんですね。 僕もその話は気になっていたものの、そのためだけに Netflix に契約するのもアホらしかったので流石に見ていませんでした。 ちなみに、Netflix の契約は月々800円とかなので、どう考えても映画を見に行くよりは安く済むし、何なら他の映像作品も見れるので絶対そっちの方がいいです。

そうこうしているうちに、映画好きの先輩に日本沈没の映画をオススメされることとなりました。 オススメを受けてネットで上映情報を調べてみたところ、「上映している映画館は都内で2つだけ」「上映時間はそれぞれ1日1回ずつ」「明日で上映最終日」という絶望的な情報が目に飛び込んできます。 下の画像がその検索結果のスクショです。

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いや、ド田舎のバスでももうちょい本数あるわ。 ちなみに、参考までに鬼滅の刃のタイムテーブルを見てみましょう。

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流石、無限列車を名乗るだけあって無限に本数がありますね。 これを見てしまうと、日本沈没の上映予定はもはやタイムテーブルではないですね。ただのタイムです。

というわけで、映画館のサイトでチケットを買おうとしたのですが、座席指定ページがなんと真っ白。 すごい。上映最終日にも関わらず、僕以外誰も前日にチケットを買ってない。 都心の、ど真ん中の、天下のTOHOシネマズで上映されている映画がですよ? 日本が沈没でもしてなきゃここまで全空席にはならないだろ。 しかも、「特別料金」とか書いてあって学割とかも一切効かないし、この時点で香ばしい香りは漂ってきていました。

僕はとんでもなくつまらない作品を勧められたのではないかと震えながら真ん中の席を予約して、翌朝の9:30に映画館へ足を運びました。 いや、何でこんな映画を観るためだけに早起きしなくちゃいけないんだ。

しかし、シアターに着いて少しだけほっとしました。 昨晩席をとったときには僕しかいなかったはずですが、見渡せば何人か他にも観客がいるではありませんか。 最終的には10人ぐらい観客がいる状態で映画が始まりました。 僕はかけ算が得意なので、「よかった。10人いるってことは、想定の10倍は期待できそうだな」と思いました。

まあ、それが間違いだと気づくのに30分も要らなかったわけですが。

ということで前置きが長くなってしまいましたが、以下に感想をつらつら書いていきます。

感想

全体的に崩れていました。

背景はそんなに問題なかったのですが、特にキャラクターがひどい。 自分で言うのもなんですが、僕が崩れていると感じるのって相当で、マジでここ最近見たアニメの中で一番作画が悪かったです。 前のカットから移り変わると、「いや、こいつ誰?」ってなるぐらい作画が悪くて、服装や髪型、肌の色、体についた傷、声などで何とか判別が付いているレベルでした。

キャラクターを動かしやすくするためだと思うんですが、それにしたって酷い。 せめてキャラクターの同一性ぐらいは判別できるようにしてくれ。 知能テスト解いてるんじゃねぇんだぞ。

一方で、背景とか小物はよく動いていたと思いまし、地震のヤバさみたいなものはよく描けていたのかなと思います。

音響は結構良かったんじゃないかなと思います。 SE はそこそこ迫力があって、緊迫感を損なうことは無かったように感じます。

声優も、主人公を上田麗奈が熱演していて良かったと思います。 まあ、その熱演のせいで逆に面白くなってしまった箇所もあったんですけど……

お話

絵や音が微妙でも、お話や演出が文句なしに面白ければ、名作と呼ばれることもままあると思います。 ただ、その理屈で言えば残念ながらこの作品は名作ではありません。 何故なら、お話が文句を言いたいぐらいめちゃくちゃだからですね。

えーっと、どこから話しますかね。本当に、全編通してツッコミどころばかりなので、全部語るしかない。 この作品、1クールアニメを圧縮して映画にしただけあって本当にすごくて、どこをどう切り取っても面白い箇所しかないです。 これまで見て来たアニメ映画も、ある程度はポイントを絞って感想を言えたのですが、本作は全部すごいので全部語る他ありません。

ということで、大人しく時系列順に話そうと思います。

プロローグ

日本沈没2020では、開幕で建物が全てぶっ壊れるレベルの大地震が来て日本がめちゃくちゃになります。

そんな中で、陸上の選抜メンバーである主人公、歩は競技場で地震に巻き込まれます。 彼女の家族(父、母、歩、弟の4人家族)も同様に散らばっており、何とか一か所に集まろうとします。

各自、何とかして家に戻ろうとするわけですが、家のあたりは既に崩れており誰もいません。 そのとき、近所の神社がゲーミングカラーにライトアップされているのを見つけ、「もしかして、あの独特の色は……!」となり神社で再会できます。 父親がかつて自宅の庭をゲーミングカラーにしていたらしく、それを思い出してあのライトアップが父親の仕業だと気づいたわけです。

ゲーミングカラー神社の絵面はちょっと面白かったですが、この時点では大地震の絶望感や家族の再会などをしっかりと描写できていて、普通にちゃんとしたアニメだと思っていました。

サバイバル編

そこから、家族4人+知り合いのお姉さん+歩の先輩の計6人で、安全っぽい西へ逃げようという話になります。 何で西が安全と分かったかと言うと、ネットの情報を鵜呑みにしただけです。 すごいですね。タイトルに2020とついているだけあって現代的です。

6人でサバイバルをしながら西遷を続けるわけですが、お父さんが本当にすごい。 作中で特に理由は説明されていないのですが、サバイバル能力が非常に高くナイフ一本でイノシシも仕留めてしまいます。 いや、何で?

そんな中、この作品の転機が訪れます。

僕は、普通にドキドキしながらこの作品を純粋に楽しんでいたのですが、そんな中で父親が立ち入り禁止のフェンスを乗り越えて山芋を掘ろうと言い出します。 父親は「山芋はな、こうやって掘るんだぞ」と言いながら慣れた手つきでスコップを扱い、山芋を掘っていきます。 この父親と一緒であれば、この先も生き残れるかもしれないと思わせてくれました。

しかし、同時にその時点で若干嫌な予感がしていました。 父親はかなり深くまで穴を掘っていた(2メートルぐらい)ので、このタイミングで地震が来て土砂崩れとかで生き埋めになってしまうのではないかという不安があったのです。 この手の作品で、有能すぎるキャラクターは早々に退場するのがお約束なので。

ですが、日本沈没2020はそんな僕の予想を遥かに上回ってきました。

少し離れた場所で蔦の這うフェンスを眺めている主人公の歩。 何気なく蔦を払うと、そこには「立ち入り禁止! 不発弾が埋まっています!」の赤い文字が。

直後、画面が父親に切り替わると同時に、父親のスコップが「カキン」という金属音を上げて何かに突き当たります。

「嘘だろ……?」

父親はそう呟くと、不発弾の爆発で弾け飛びます。

「嘘だろ……?」じゃねぇんだよ。こっちのセリフだわ。 え、オレが見てたのって地震を題材に扱ったアニメだよね? なんでお父さん不発弾で死んだの?

「いやいや、まさか死んでないだろ」と思っていたら、お父さんの腕がお母さんの近くに吹き飛んできます。

いや即死ですね、これ。

100歩譲ってですよ。地震とかそれに関連する土砂崩れとか津波で死んだりするのは分かる。 でも、不発弾は流石に面白すぎる。地震がテーマの作品で出て来る死因じゃねぇだろ。 「大地震が起き、父親が死にました。どうしてでしょうか」っていう問題でウミガメのスープ作ってんのか?

このシーン、本当に悪い意味で衝撃的で、映画館じゃなかったらたぶんループ再生して爆笑していたと思います。 本当にこの作品を運命づけるというか、ここから先もこんな感じの展開が続くんだろうなと確信させてくれました。 このあたりから、僕の口角が上がり続けます。

山道編

それから、傷心もそこそこに徒歩で移動していた歩たちはトラックに拾われます。 そのトラックの運転手がクズで、お姉さんにちょっかいだしたり、お母さんを殴ったりし始めたので、最終的にボコボコにしてトラックを奪います。 何だったんだこいつ。

その後、行き止まりでトラックを乗り捨てて富士山の麓あたりを歩いていた一行は、休憩しようと腰を落ち着けます。 歩とお姉さんはお手洗いに行こうと、一行から少し離れて山道の脇を降りていきます。 僕も歩たちも、お父さんの死の衝撃からようやく立ち直れてきたわけですが、突然お姉さんが死にます。

……?

もう一度言いますね。 突然お姉さんが死にます。

低い箇所に有毒ガス(たぶん、硫黄化合物)が溜まっていたらしく、屈んだ拍子にお姉さんが窒息死したらしいです。

また地震関係ないですね。

大喜利大会か? 大地震が起きたけど地震以外の死因で殺す大喜利をしてるのか?

一応、頑張って好意的解釈をすると「大地震によって有毒ガスが噴出し、本来安全なはずの場所にもガスが充満した」ぐらいの関係性を認めることはできそうですね。 作中ではそんな説明は一切ありませんでしたが。

いずれにせよ初手の死亡シーンが不発弾だったので、もはや有毒ガスぐらいなら「うんうん! 全然地震で死んだカウントできる! オッケー!」ってなりますね。

ちなみに、有毒ガスがあるという話は、急に空から降りてきたユーチューバーの説明で分かります。 待ってください。有毒ガスで僕の頭がおかしくなったわけじゃないんです。本当なんですよ。急にパラセール背負ったユーチューバーが空から降りて来たんですって。

ということで、お姉さんに代わる形でユーチューバーが同行します。どういうことだよ。

その後、一行は山中のスーパーマーケットにたどり着きます。 そこでは、モルヒネでラリったおじいさんが一人で生活していました。 紆余曲折あって弟がおじいさんに懐き、大地震が来たのでおじいさんも連れて、全員でスーパーを脱出します。

いや、パーティメンバーが濃すぎる。もっと普通の奴らでいいだろ。

なんか、このあたりからもはやこの作品が何をやりたいのか、見えなくなってきていました。 「普通の人間が大震災に巻き込まれて、多くの離別を経験しながらも、必死に生き延びる様を描いた作品」だと勝手に思ってたんですけど、どうやら僕の勘違いだったようです。

ちなみに、先ほど仲間にしたユーチューバーが本当に有能で、ここから先最後までずっとこいつが話を転がし続けます。 海上で気球を直して救助を呼んだり、博士の秘密基地の隠しファイルにアクセスしたり、水陸両用の装甲車をどこかから持ってきたり(etc...)。 もう全部あいつ一人でいいんじゃないかなレベルで有能です。最近のユーチューバーってすごいんですね。

教団編

その後、一行は道の途中で外国人を拾って、カルト教団の施設に身を寄せます。 展開を字面に起こすだけで意味不明すぎて笑顔になってきますね。 すみません、僕だってこんな脈絡もないアホみたいなこと書きたくないんです。 でもそういう脚本だったんだから仕方ないじゃないですか……

一行が夜中に謎の巨大施設にたどり着き、壁を明かりで照らすと一瞬だけ謎のシンボルが映ります。 この時点で僕は嫌な予感がしていたのですが、その後施設から出てきた人がよく分からないポーズで出迎えてくれた時点で確信しました。あ、カルト教団だなと。

ですが、僕の予想とは違い、めちゃくちゃまともなカルト教団でした。 信仰を強制してこないですし、衣食住も提供してくれますし、娯楽もある。 信徒たちも幸福そうですし、主人公たちに危害を加える者もいない。

というか、教祖が”本物”だったんですよね。 死者と話せるという触れ込みの教祖の少年なのですが、実は教祖の少年にずっと付いている母親の方が本物の霊能力者で、マジで死者の声が聞こえます。 いや、何で急にファンタジー要素入れてきたの? この作品、終始こんな感じで、何がやりたいかが全然分からないでぶれぶれなんですよね。 30分ごとに別の人が脚本書いたのかな。

それまでほとんど喋らず母の死に沈んでいた先輩が「これは(地震で死んだ)母親のカレーだ……」と涙を見せたり、ユーチューバーと先輩が一緒にDJをして友情を確かめあったり、モルヒネおじいちゃんが教祖を孫と勘違いして暴れたり、一家が「死んだ父親の声が聴きたい!」とひと悶着あったりしましたが、また大地震が来たので大体全部ぶん投げて施設を去ります。 起承転結の転は全部ぶん投げていいってことじゃないんだよな。 マジで何だったんだよこの時間。

施設を出るときに、道で拾った外国人と薬漬けおじいちゃんは置いていきます。外国人は信徒で、おじいちゃんは孫(偽)に付き添いたいと考えたかららしいです。 ちなみに先輩は付いてきます。いや、お前あの流れで入信してないのかよ。 入れ替わりで、寝たきりの潜水士が仲間に加わります。 この潜水士も霊能力者か何かかは知らないですが、なんか地震を予知できるっぽいです。

また車で逃げ出そうとした際に、いくつか面白かったシーンがありました。

まず、信徒たちが銃で襲ってきたのがめちゃくちゃ面白かったです。 脈絡なく急に銃が出てきたのも面白かったですし、何で信徒たちが襲ってきたのかもよく分からなかったです。

次が、教祖の最期です。 教祖の少年は生まれつき脳に障害があったっぽくて、言葉を喋れなかったっぽいです。 ぽいぽい言ってるのは、上記の説明が案の定一切作中でなされていないからです。 崩れゆく施設の中で教祖の少年が、駆けつけてきた母親を見て初めて「ありがとう、お母さん」と拙いながらも言葉を発します。 その時点で教祖の父親?が「いま、言葉を……!」とか言い出したことで、僕は上で言っているような仮説を立てて流れを見守っていました。 ですが、母親が駆け寄ろうとしたその瞬間、上から落ちてきた瓦礫が教祖の頭に直撃し、教祖が死にます。 間が完璧にギャグだったというか、このときようやくこのアニメが『王様ゲーム THE ANIMATION』と同質であると理解できました。

海編

教団を抜け出した一行は、脱出船の場所までたどり着きます。 抽選で選ばれた人間と、一部の優秀な若者を優先的に国外に逃がしているらしく、陸上の選抜メンバーである主人公やそのコーチも選ばれます。 ただし選ばれたのは主人公だけ。家族は付いて行けないらしい。主人公のコーチはその旦那も付いていけてるのに?

ここ、結局主人公が乗船をやめて家族の元に戻ってくるのですが、「その展開をやりたいがための設定」という感じがして勢いがすごかったです。 主人公が「私の居場所はここ!家族のみんながいる場所なんだよ!」みたいなことを言い出すのですが、今後もこれと同じようなセリフは繰り返し作中で叫ばれています。 日本と外国の対比とか、主人公が「それでも私の居場所はこの日本なんだよ!」とか言い出すわけです。 恐らく、「帰る場所、居場所、愛すべき祖国」みたいなものを作品のテーマにしたかったのでしょうが、それをキャラクターの口から直接的に言わせるのはあまりに愚直ですし、説教くさいですね。 何でユアストしかり、クソアニメってすぐ説教を始めてしまうんですかね。

その後、何故かは分からないですが主人公たちは再び独力で海に出ようとします。 ここ、本当に展開がすっ飛んでいて、マジで一瞬気絶してたんじゃないかってぐらい全然分からなかったです。

一度、大型船(脱出船とは別のやつ)への乗船を断られたのちに、漁師のおっさんが声をかけてくれます。 どうやら自分の漁船を使って、避難しきれなかった人たちを逃がそうとしているようです。

「は、あんな大型フロートはダメだ。それより俺の船に乗んな!あんなでかぶつより沈まねぇぜ?」

と啖呵を切る漁師のおっさん。

その20秒後、漁船は沈みます。

ここの展開さすがにスピード感ありすぎて爆笑してました。瞬間時速で言えばてーきゅう超えただろ。

乗船を断られた大型船が5秒で座礁して爆発したのも面白かったし、その余波で漁船が沈むのも面白かったです。 座礁しても船は爆発しないし、余波で飛んできた破片で船体に穴が開いたりもしないだろ。

沈みゆく船で何とか救命ボートを用意する漁師のおっさん。ですが、同乗していたモブ避難民が「俺が先だァ!!!」と銃をぶっ放します。

いや、この一分間面白すぎるだろ。

モブ避難民が雑に銃持ってるのも面白いし、悠長にぶっ放すのも面白いし、なんかもう全部面白い。 「私の居場所はこの日本なんだよ!」じゃないんだよな。オレの知ってる日本では、銃持ってる一般人なんてそうぽんぽんいねぇわ。

とかなんとかやっているうちに主人公、弟、漁師のおっさんの三人のみが救命ボートに乗り込みます。 どうやら救命ボートは複数あったらしく、他の面子は別のボートに乗り込んだっぽい。 おっさんは銃で腹を撃たれており、気丈に振舞いますが翌日には死にます。死肉を海鳥についばまれるシーンはかなりグロテスクでしたね。

いや、また死因が地震関係ないんだけど。 今のところ主な登場人物の死因が、不発弾、有毒ガス、銃殺ですからね。 もういっそのことさっさと沈没してくれ。

失礼、取り乱しました。 そうして姉弟二人で漂流を続けます。 この漂流が何日ぐらい続いたのか、描写からは全然分からなかったのがすごいですね。 普通、こういう漂流ものって日数の経過によって徐々にやつれていく様とか、食料や水が無くなっていく恐怖を描くものだと思うんですが、ほとんどそういう描写がなくマジで何日経ったのか分かりませんでした。

いや、冷静に考えると漂流ものの作品じゃないんですけどね、これ。地震ものなんですけどね。

そんな風に漂い続けて何日が経ったか(マジで何日経ったか分からない)、別のボートで生き延びていた母親と先輩が助けに来てくれます。 寝たきりの潜水士はいますが、ユーチューバーはいません。 ご都合展開過ぎましたが、もはやこの作品でその程度のことで驚かなくなっていました。

その後、これもまた偶然にも海上で漂流するモーターボートを見つけ動かそうとしますが、錨のロープが海底で何かに引っかかっていて動きません。 そこで、お母さんが潜ってその原因を取り除くと言い出します。 お母さんはどうやら水泳選手だったらしく、泳ぐのが得意らしいです。 何で伝聞系かというと、これまた作中で明言はされていないからです。 いや、何で作品のテーマはこれでもかってぐらい直接的にセリフで言わせるのに、そういう説明は省くんだよ。一言入れればいいだろ。

そして、潜った母親は引っかかっていたロープを外し、浮上しようとしたところで、息が続かなくなり死にます。

次は溺死かよ。

ここまで来ると逆に次のメインキャラの死因が楽しみになってきますね。 ここの場面は本当にすごくて、そのあと心肺蘇生のくだりを長々とやるので絶対に息を吹き返すと思っていたんですけど、普通に死ぬんですよね。 人はあっさりと死ぬということを教えてくれる、本当に示唆的な場面でした。もっとTPOをわきまえて示唆して欲しい。

それから数分のうちにユーチューバーが水陸両用の装甲車に乗って助けに来てくれます。

もう本当にやだ何も分からない……

「もう少し早く来ていればお母さんは死なずに済んだのに!」とか「その乗り物は?」みたいなくだりも全然なく、歩たちはすっと装甲車に乗り込みます。 まあ、これまで散々色んな人の死を見てきましたからね。 今さら母親が死んだところで「さ、次行くか」みたいな感じなのかもしれません。

ラストラン編

ここでもう一度、現在のメンバーを整理しましょう。

歩(主人公)、弟、歩の先輩、ユーチューバー、寝たきり潜水士です。

実は寝たきり潜水士が前々から地震を予測していたとか何とかで、彼が親しくしていた博士の秘密基地に行くことになります。 このあたりの展開も結構意味分からないんですが、いちいちツッコミ始めると終わらないので割愛します。

ユーチューバーは寝たきり潜水士を担いで海中に沈みかけている秘密基地へ向かい、重要情報を入手しようとします。 この情報、めちゃくちゃ重要かと思いきや、日本の沈没と隆起のタイミングの情報が載っているだけです。 そんなことのために命がけでわざわざ取りに行くの?

そして重要情報をメモリーカードに写し終え、戻ってきたユーチューバー。 いや、お前は死なないのかよ。いかにも沈みゆく中で死にそうな感じだったじゃんか。

しかし、戻ってきたのも束の間、彼らを高波が襲い、メモリーカードが波にさらわれて埠頭の先の方へと滑っていってしまいます。 このままではメモリーカードが海に流されてしまう。

そのとき、これまで無言を貫いていた先輩が「僕が走って取りに行く」と高らかに宣言しました。 ユーチューバーとラップバトルで友情を深め、母の死から立ち直りつつあった先輩は覚悟を決めて走り出します。 次の高波までは10秒。その間に行って戻って来れれば先輩の勝ちです。 先輩は埠頭の先でかっこよくメモリーカードを掴むと、その場でターンしこちらに駆け戻って来ます。 なんかキラキラするエフェクト出てるし、BGMは勝ち確っぽい感じだし、先輩も笑顔で走ってくるし、誰もが勝ちを確信していたと思います。

直後、メモリーカードをこちらへ放り投げた先輩は高波にさらわれます。

そんなことある?何度この感想を抱けばいいのか分からないけど、それでも言わせてくれ。そんなことある?

しかも、ここにきて地震関係の死因で死ぬのかよ。 これまで地震無関係の死因だったなら最後までそれを貫き通せよ。

そのまま先輩は行方不明になります。その後、一度も作中で触れられないので恐らく死亡確定です。 いや、ユーチューバーは何やっても死なないのに、先輩は一瞬だけ輝いて即死したんだけど。格差社会がひどい。

エピローグ

その後、なんやかんやあって結局主人公たちは自衛隊っぽいヘリで救助されます。 マジで今までの大移動はなんだったんだってぐらい、あっけなく救助されます。

その後、主人公はロシアの病院に運ばれ、医者から「足の傷から感染症が広がっている。死にたくなければ足を切り落とすしかない」と宣告されます。 それは、陸上選手を目指す彼女にとっては選手生命を絶たれることに他なりません。

僕はここで本当に笑いそうになりました。

主人公は映画の開幕5分でふくらはぎに裂傷を追うのですが、作中でこれを一度も治療しません。 いや、本当に包帯すら巻かないで、全く消毒もしないんですよね。 医療用品が無かったとか、怪我に気づかなかったとかではなく、何故か執拗に治療をしなかっただけです。 弟の切り傷には医療用ホッチキス使って怪我を止めたり、先輩の傷は消毒して包帯巻いたりしてたのに。

だから、マジで最後に足を切り落とす展開をやりたいためだけに傷口を放置されていたっぽくて、本当に吹き出すかと思いました。 この作品途中から本当にめちゃくちゃだったので「足の傷の伏線回収せずに終わるんじゃなかろうな」と思っていましたが、最後に回収されて安心した反面、展開ありきすぎて面白かったです。

それから主人公が足を切断するかどうか苦悩するシーンもなく8年の月日が経過し、そこには足を切り落としながらも義足で活躍する主人公の姿が……

こうして、この作品は幕を閉じます。

え、これで終わりなんですか!? 嘘ですよね!?

こんなにも終わって欲しくないと思った作品はなかなかありません。 これまで自分が見て来た2時間半が、こんなあっさりとよく分からない展開で終わっていいはずがない。 ですが、目の前では無慈悲にも戦犯リストスタッフロールが流れ始めます。 呆然とスクリーンを見つめて笑顔になっていました。

まとめ

何度も繰り返しますが、このアニメはマジで『王様ゲーム THE ANIMATION』なんですよね。

人がクッソ雑に死んでいくところとか、それがシュールギャグになっているところとか。 地震よりも人の方が怖いんだよ、という主張なら分かるのですが、死因的にはそういうわけでもなく、本当に思いついた方法で殺しただけという感じがします。 なんというか不条理な死の描き方にしたってもう少し色々とあったんじゃないんですかね。 展開ありきの設定や、超ご都合展開、有能・無能すぎるキャラクター、そのくせして死体の描写だけはやけに丁寧など全てにおいてめちゃくちゃで本当にすごかったです。 沈没していたのは日本じゃなくてこの作品の脚本でした。

日本沈没』自体は有名なSF小説で、幾度も映画化やドラマ化されていますし、それらと一線を画したかったのは分かります。 ですが、超え方がまずいというか、超えてはいけないラインも超えてしまった感があって創作って難しいなって思いました。 観客の予想を裏切るのは大事ですけど、期待は裏切ってはいけないと思うんですよね。 まあ、僕は本当に楽しめたので良かったですが。

日本沈没』は「普通の人間が大震災に巻き込まれて、多くの離別を経験しながらも、必死に生き延びる様を描いた作品」ではなく、「ちょっと頭のおかしい人間たちが大震災に巻き込まれて、それはそれとして関係ない死因でバタバタ死んでいくが最終的にご都合展開で何とかなる作品」だったっぽいです。

さて、映画の上映はもう終わってしまいましたが、 Netflix は月々800円から加入できます。 日本沈没2020のノーカット版の全話が公開されているのでぜひ見てみてください。 本当に面白い作品なので、天井のしみすら数え終えて暇で暇で仕方ないときにはオススメです。

さいごに

最後に、この作品から学べたことは「山芋を掘るときには不発弾に気をつけよう」です。 今後はこの教訓を胸に、いつ大震災が来ても大丈夫なように備えようと思います。

まあ、いくら地震に備えても、死ぬときは地震と関係ない死因で死ぬんですけどね。

*1:何故か僕が北海道に行くと地震が起こる。