2025年に読んだビジネス書・技術書の感想

この記事は何

この記事は、2025年に僕が読んだビジネス書・技術書などのレビューを書いたものです。 僕は普段、毎クールのアニメの感想ブログを書いているんですが、それのビジネス書版だと思ってください。

僕の役職柄、主に事業運営に関わるものやマネジメント、エンジニアリングの設計領域に係る内容のものが多いです。

ビジネス書・技術書で一括りになっているのは何故?と思われるかもしれませんが、普段ロボットアニメも異世界ものも全部同じ基準でレビューしているのでそれに準じました(?)

ランク付けはざっくりC~Sです。 各ランクの大体の指標は次のような感じです。

C:順当につまらないし、学びもあんまりなかった。

B:普通ぐらい。部分的に学びはあるが、別に金を出して買うほどかと言われると微妙。

A:順当に面白く、学びもある。良作。

S:めっちゃ面白い。名著なのでみんな読んで欲しい。

今回、SSSランクはありません。一定以上評価の高い書籍を選んで読んでいたため、とんでもない光るクソはなかった。

感想

C

チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ(C)

リーダーシップ論・組織論についての本だけど、全編通してかなりつまらなかったし内容も薄い。

主張としては「チーム作りは動的なもの(チーミング)であり、チーミングこそがリーダーシップなんや!そして、チーミングの結果として学習する組織になっていくことがイノベーションには大事やで!」という話なんだけど、たったそれだけのことを小難しく、不要なエピソードとともに紹介してくれる。

いや、この手のビジネス書あるあるとして、マジで知らん会社の知らん人間のエピソードを細かく描写してくるんだけど、この本はそれが特にひどくて「これ要る?」みたいな描写ばっかりだった。

組織論とかリーダーシップ論に全く触れたことがない人間が読むとしたら小難しく冗長に書かれすぎていて微妙だし、一定の理解がある人間が触れたら当たり前体操の情報しか書かれておらず、何が面白い?

これ読むなら『学習する組織』あたり読むのがいいと思う。

B

Tidy First?―個人で実践する経験主義的ソフトウェア設計(B)

負債返済の話。薄くて読みやすいけど、あんま感情が芽生えなかった。エンジニア1、2年目とかで読むと感情が芽生えるかも。

このテイストなら整頓をいつやるのかの判断基準とか、もうちょいちゃんと書いてくれてもいいのになとかはある。

時間の無駄とは言わないが、後述のクリーンアーキテクチャとかの方が読んだときの学びは多い。

ネットワーク・エフェクト 事業とプロダクトに欠かせない強力で重要なフレームワーク(B)

後述する『プラットフォーム革命』と、内容としては結構重複している部分も多い。

差分としてはあちらがプラットフォーム・ネットワークの構成要素全体を整理していたのに対して、こちらはより具体的にネットワークをどう作っていくかにフォーカスしている。

ネットワークは一定の規模がないと成立させられないという「コールドスタート問題」から始まり、いかにバイラル成長が発生するサイズまでネットワークを成長させ、最終的に天井の打破と参入障壁づくりをするか。

必要最小限のネットワークである「アトミックネットワーク」の概念などを獲得できたのは結構良かったと思う。

THE MODEL(B+)

これ今となっては結構当たり前の内容になってしまっているのでやや評価を下げているが、内容的にはまあ普通にいいことが書いてあったとは思う。当時は革新的だったのかもしれない。

いわゆる THE MODEL の分業スタイルについてざっくり書かれており、同時に分業によって生じる副作用にもどう立ち向かうべきか論じられている。まあそこまで教科書通りには行かんだろとは思うが、一定頭の中に入れておくと良さそう。実際、弊チームでbizメンバーがやっていることの前提の理解が深まった。

プロセスの話だけでなく組織・マネジメント論についても踏み込んで書かれていたのは意外だった。まあでもここらへんの話はさらっとなので、流石に他の書籍などをちゃんと読んだ方が良い。

A

型システムの仕組み TypeScriptで実装しながら学ぶ型とプログラミング言語(A)

TypeScript で自分で型検査器を少しずつ拡張していきながら、型システムに対する手触りを増していく本。かなり噛み砕いて執筆されていて、難しい数学的な議論などはほぼ出てこない。

なんとなくで普段触っている型システムというものに対する気持ちを獲得できるという意味で良い本。

これを読んだ上で TAPL とかに行くと結構とっつきやすいんではないだろうか。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント(A)

内容はかなり良いが、いかんせん古い。初版が1983年なので、時代的にもあんまりITの波も来ておらず全体的に製造業などの話が多い。

これ結構順番が逆だと思うんだけど、後年発刊された色々なリーダーシップ・マネジメント系の書籍がこの本の影響を受けているためか、内容に見覚えのある話も多かった。

マネージャーの仕事として、「情報収集」「情報提供」「意思決定」「ナッジング」があるよみたいな話も有名で、オライリーの『エンジニアリングマネージャーのしごと』にも書かかれている。*1

個人的な面白ポイントは、ミーティングを「情報交換・知識の共有(プロセス中心)」「意思決定(ミッション中心)」の2つに分解しており、前者を「マネージャーの仕事をバッチ処理するための時間」と整理していたところ。都度メンションされるとだるいので「急ぎじゃないやつはDSでまとめて聞くわ」みたいな効率化をしようという話。

「後者が多いとプロセス化できてないんで組織としてはやばいよ」という警鐘があまりに自分の境遇に当てはまっていて「あばばばばばば」ってなった。

プラットフォーム革命―経済を支配するビジネスモデルはどう機能しているか―(A)

会社の偉い人に「オタクくんも読んでよ!!2週間後に勉強会やるから!!」って言われて読んだ本。僕が異常独身男性ですべての余暇を自分のために使える人間でよかったですね。

いわゆるプラットフォームビジネスをやるのであれば1度は読んで良い本。

プラットフォームの構成要素や、どうやって伸ばしていくべきかなどの話が一通りまとまっており、プラットフォームビジネスへの向き合い方がわかる。会社としてプラットフォームやるんなら、マネージャーとかリーダー陣は全員必読にしておくと目線が揃うと思う。

「ソフトウェアはオワコン!時代はプラットフォームや!」という強火の主張をしているが、これを読んでいる現代、プラットフォームも開拓し尽くされてしまい「プラットフォームはオワコン!時代はAIや!」になりつつある。

いや、正確にはプラットフォームはオワコンではないんだが、既存のネットワークが強固すぎて新しく入り込むのが至難の業になってしまった……

既存の強固なネットワークがある場合にどうやって新興勢力が殴り込みをかけるかも当然論じられているが、現代だとそれも難しい気もするな。上手く刺さればビリオンダラープラットフォーマーになれる勝者総取りの世界なので、マジで一発当てる話をしている。

エレガントパズル エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか(A+)

エンジニアマネージャーの本として、必要なトピックはおおよそ一通り触れているのではないだろうか。

ただ、元がブログ記事だったからか一冊の本としてはそこまでまとまりがなく、とっ散らかっている印象はある。単純にトピックをさらうような入門書として読むのであればオライリーの『エンジニアリングマネージャーのしごと』とかの方が断然よくできている。

筆者の体験ベースで書かれているからか、トピックによって解像度がかなり違っていたのが面白かった。 チームサイズの話のところで急に「オンコールのローテーションには8人のエンジニアが必要」とか書かれていて、この人オンコール体制の設計やって苦労したんやろうなぁ。

前述のようにムラはあるものの、マネジメント本としては全体的にベストプラクティスとして頷ける内容のものが多く、良書だと思う。

「ポリシーに従い、例外に従わない」とか「ヒーロー*2をやっつける」とかキャッチーで良いフレーズが結構入っていて、僕個人としては普段考えていることの言語化の助けになった。

S

なぜ、あなたがリーダーなのか――本物は「自分らしさ」を武器にする(S)

Authenticity(本物であること)にリーダーシップの根拠を求めるちょっと珍しい論調の本。タイトルだと「自分らしさ」となっているが、文章中では「本物であること」とも記述があり、個人的にはこっちの方が好き。

本物のリーダーたり得るために「言行の一貫性」「首尾の一貫性」「自分らしくあること」などの必要性を説いている。

「自分らしさ」とかいう言葉を使うと「あなたはあなたのままでいいのよ。自分自身を認めなさい」みたいな胡散くさい占い師か?となってしまうが、一応この本としてはそういう話ではない。「付け焼き刃のリーダーシップ論はすぐに化けの皮が剥がれる。人それぞれ性格も生い立ちも違うので、自分らしさに自覚的になった上でリーダーシップとして演出し続ける必要がある」という主張をしていた。僕は「演出としてのマネジメント」みたいな表現が結構好きなので、好きなことが書いてあって気分が良くなった。

要するにメタ認知……ってコト!?

CLEAN ARCHITECTURE 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計(S)

名前はずっと前から知っていて、一度読んでみたいと思っていた設計本。その高名に違わず流石に良書だった。

「そもそもアーキテクチャって何のためにやるの?」に対して「コストを下げるため」から始まり、そのための方針として「決定を先送りにできるようなアーキテクチャにする」というものがあり、それを実現するための色々な原理原則を紹介している。

個人的には「建物の設計図を見たらそれが個人向けの戸建てのものか、図書館のものか分かるようになっている。貴方のシステムはそのようなアーキテクチャになっているか?」という問いかけが結構おもろいなと思った。現実問題としてアーキテクチャだけを見てユースケースを言い当てるのは難しいと思うけど、”それらしい”アーキテクチャかどうかを気にしておくのは大事な感覚そう。

いわゆる”クリーンアーキテクチャ”と呼ばれる同心円の図も出てきてちょっと感動してしまった。

何かインターネット上で「クリーンアーキテクチャというアーキテクチャはないよ」と言う言説が囁かれているが、個人的な解釈としてはそれはそれでやや言葉足らずな言い方だと思っていて、「クリーンアーキテクチャというデザインパターンはないが、クリーンアーキテクチャと呼んで良い”アーキテクチャ”は存在する」と思っている。MVCがどうとかは全部アーキテクチャの話ではなくてデザインパターンの話やなという気持ちになった。

V字回復の経営(S)

この本、ビジネス書としては珍しく読み物としてすごい面白かった。

ビジネス書とかいうの「皆さんお仕事なんで読み物としてつまらなくてもちゃんと読みますよね?w」みたいな著作物としての怠慢が透けて見える本がほとんどなんだけど、この本はちゃんと読者に学びを与えるだけでなく読み物として面白くなるように気を遣っていた。

筆者の体験を元にしたストーリーと、筆者の主張の展開を交互に繰り返すんだけど、テンポよい筆致でするすると読み進めることができる。

主題として、業績不振の真因を「組織の設計不足」とそれによってもたらされる「希薄な責任感」に求めるというのがある。それを解消するには、”強烈な反省論”しかないという主張で、「お前ら”ちゃんと”反省してるか?責任、感じてるか?」という話をしていた。いい話だった。

正しいものを正しくつくる: プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について(S)

これ結構タイトル詐欺で、多分より”正しい”タイトルにするのであれば「より良いものをより良くつくる」とかになりそう。

前提、筆者は「絶対的な正しさ」については懐疑的で、さりとてより良いものをより良い方法で作っていくことはできるよね〜という話をしていた。

アジャイルアジャイルと言いつつ、じゃあプロダクトをアジャイルに作るってどういうことなの?という話から始まり、2つの不確実性(目的不確実性・方法不確実性)に向き合うために必要な視点、戦略・戦術、具体のアクションなどがまとめられている。この本の内容を愚直に実践するだけでも、割と正しいアジャイルに近づくんじゃないかなとは感じる。

自分語りになるけど、書籍の中で「開発チームと PO の間の境界(分断)が間違ったものを正しく作り始めることにつながる」って書かれていて、ワイがEMとしてPOの責務も兼任してるのはここの分断を減らすのに大きく貢献していそうだった。一方、チームとしてせっかくアジャイルやってるのにスプリントで得ている学びの量が少ない課題はあり悩みどころではある。

まとめ

今年はまあぼちぼち読んだんではなかろうか。会社の勉強会課題として読んだ本もあるが、半分ぐらいは趣味で読んでいる。

一度は読んでおきたいなと思っていた書籍たちもそこそこ読めたので割と満足かな。

ビジネス書、マジで意味のわからん具体エピソードもっと削ってくれれば読みやすいのにな……

まあでもつまんないクソアニメも大体急に意味わからんサブキャラクターの過去編とか始めたりするから同じようなものなのかもしれん。

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